この記事の監修者

土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:建物表題登記など表示に関する登記全般。

経歴:開業以来23年間、建物表題登記など登記に関する業務を行ってます。
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建物表題登記の必要書類としては、次の書類があります。

  • 登記申請書(常に必要な書類)
  • 所有権証明情報(常に必要な書類)
  • 住所証明情報(常に必要な書類)
  • 各階平面図および建物図面(常に必要な書類)
  • 資格証明情報(申請人が法人の場合のみ必要)
  • 相続証明情報(相続人が申請人となる場合のみ必要)
  • 代理権限証明情報(代理人が申請する場合のみ必要)

上記書類は、すべて常に必要というわけではなく、
登記申請書と所有権証明情報、住所証明情報、
各階平面図及び建物図面は、常に必要な書類ですが、
それ以外は、ケースによって必要になる書類ということです。

ただ、建物表題登記に必要な書類で、不備や不足があれば、
法務局へ登記申請した際に、補正や却下などで困ることがあります。

そこで、建物表題登記の必要書類について、
建物表題登記の申請業務を行っている土地家屋調査士が、
1つ1つ具体的にわかりやすく解説いたします。

この記事を閲覧することで、建物表題登記の必要書類について、
どのような場合に、何が必要になるのかがすべてわかります。

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登記申請書

登記申請書というのは、下図1の書面のことです。

建物表題登記の登記申請書の例1
(図1:建物表題登記の登記申請書の例1)

登記申請書は、申請人が個人の場合も、
申請人が法人の場合も、代理人が申請する場合も、
建物表題登記の申請で、常に必要な書類になります。

なぜ、登記申請書が必要なのかと言えば、
申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じて、
1個の不動産ごとに作成して、提供しなければならないと、
次のように、不動産登記令第4条で定められているからです。

不動産登記令第四条(申請情報の作成及び提供)

申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じ、
一の不動産ごとに作成して提供しなければならない。

引用元: e-Gov法令検索.「不動産登記令 」. (参照 2025-5-19)

なお、下図2のように、附属建物がある場合でも、
主である建物と附属建物は、1個の不動産として扱われるため、
1つの登記申請書で作成しなければならないということです。

建物表題登記の登記申請書の例2
(図2:建物表題登記の登記申請書の例2)

また、登記申請書は、平成16年11月1日より、
日本産業規格A列4番(A4サイズ)の用紙を、
標準の用紙とすることになっています。

そして、登記申請書は、A4サイズの用紙を縦に置いて、
文字はすべて横書きで、用紙の裏面は使用してはいけません。

また、登記申請書に記載する文字は、
アラビア数字を使ってかまいません。

もし、附属建物が多くて、登記申請書が二枚以上になる場合は、
下記のように、不動産登記規則第46条1項に従い、
各用紙のつづり目に、申請人又は代理人が契印をする必要があります。

登記申請書が二枚以上になる場合
(登記申請書が二枚以上になる場合)

不動産登記規則(契印等)第四十六条

申請人又はその代表者若しくは代理人は、
申請書が二枚以上であるときは、
各用紙のつづり目に契印をしなければならない。

引用元: e-Gov法令検索.「不動産登記規則 」. (参照 2025-5-21)

所有権証明情報

所有権証明情報というのは、次の書類のことです。

  • 建築基準法に基づく建築確認通知書(確認済証)
  • 建築基準法に基づく検査済証
  • 建築請負人の工事完了引渡証明書(印鑑証明書付き)
  • 敷地所有者の証明書
  • 固定資産税の納付証明に係る情報
  • その他、申請人の所有権の取得を証するに足る情報

なお、上記の所有権証明情報が、すべて必要なわけではなく、
通常は、建築確認通知書(確認済証)と検査済証、
工事完了引渡証明書(印鑑証明書付き)の内、
2点~3点を法務局に提供するのが一般的です。

しかし、古い建物を、はじめて建物表題登記する場合など、
建築確認を受けていなかったり、
建物建築当時の建築工事請負人がわからないこともあります。

そのような場合には、所有権証明情報としては、
建築確認通知書(確認済証)がある場合と無い場合とで、
次の2点以上の組み合わせでもかまわないことになっています。

建築確認通知書(確認済証)がある場合

建築確認通知書(確認済証)がある場合は、
次の1~5の組み合わせの内、いずれかを選択して、
所有権証明情報として提出すると良いです。

  1. 確認済証と検査済証
    ※ただし、工事完了引渡証明書が必要な場合もあります。
  2. 確認済証と建築請負人の工事完了引渡証明書(印鑑証明書付き)
    ※直営工事の場合、理由書と成年者2名の所有権証明情報も必要。
  3. 確認済証と工事請負契約書及び工事代金の領収証
  4. 確認済証と固定資産税の納付証明書
  5. 確認済証と敷地所有者の証明書

建築確認通知書(確認済証)がない場合

建築確認通知書(確認済証)がない場合は、
次の1~4の組み合わせの内、いずれかを選択して、
所有権証明情報として提出すると良いです。

  1. 建築請負人の引渡証明書と固定資産税の納付証明書
  2. 建築請負人の引渡証明書と成年者2名の建物所有権証明情報
  3. 建築請負人の引渡証明書と敷地所有者の証明書
  4. 建築請負人の引渡証明書が提供できない時は、その理由書と、
    成年者2名の建物所有権証明情報及び固定資産税の納付証明書

なお、建築請負人の引渡証明書や、
成年者2名の建物所有権証明情報、
敷地所有者の証明書には、実印の押印が必要で、
押印者の印鑑証明書も添付する必要があります。

ただし、建築請負人の引渡証明書については、
建築請負人が法人の場合、下図3のように、
登記申請書などで会社法人等番号を提供することで、
印鑑証明書の添付を省略できます。

建築請負人の会社法人等番号の提供例
(図3:建築請負人の会社法人等番号の提供例)

ちなみに、なぜ所有権証明情報が必要なのかと言えば、
建物表題登記を行うにあたり、建物の表題部所有者になる者が、
建物の所有権者であることを法務局に証明するために、
必要な情報だからです。

そのため、建物の所有権証明情報は、申請人が個人の場合も、
申請人が法人の場合も、代理人が申請する場合も、
建物表題登記の申請で、常に必要な書類となっています。

建物の所有者が複数で共有の場合

建物の所有者が複数で共有となる場合には、
各々の持分割合について証明するため、
下図4のような持分証明書、又は、下図5のような上申書、
若しくは協議書が必要です。

持分証明書の例
(図4:持分証明書の例)
上申書の例
(図5:上申書の例)

文書のタイトルは特に決まりがないので、
持分証明書でも、上申書でも、協議書でも問題ありませんが、
共有者の各持分について、相違ないことを証明した情報が必要になります。

また、持分証明書、又は上申書には、
共有者全員の実印の押印が必要で、
印鑑証明書の添付も必要になります。

住所証明情報

住所証明情報というのは、下図6のような、
申請人の現住所が記載された住民票の写し、
又は戸籍の附票のことです。

住所証明情報の例
(図6:住所証明情報の例)

住所証明情報は、申請人が個人の場合も、
申請人が法人の場合も、代理人が申請する場合も、
建物表題登記の申請で、常に必要な書類となります。

なお、住民票の写しを住所証明情報とする場合は、
マイナンバー(個人番号)が記載されていないものを提供します。

各階平面図および建物図面

各階平面図および建物図面というのは、
下図7のような図面のことです。

各階平面図と建物図面の例
(図7:各階平面図と建物図面の例)

各階平面図及び建物図面は、申請人が個人の場合も、
申請人が法人の場合も、代理人が申請する場合も、
建物表題登記の申請で、常に必要な書類です。

通常、用紙の左半分が各階平面図で、
右半分が建物図面になっています。

なお、各階平面図および建物図面は、
不動産登記規則第74条で、
次のように作成方法が細かく定められています。

まず、各階平面図および建物図面は、
0.2ミリメートル以下の細線により、
図面を鮮明に表示しなければなりません。
(出典:不動産登記規則第74条1項)

そして、各階平面図及び建物図面には、
作成年月日を記載し、申請人が記名すると共に、
作成者が署名し、又は記名押印しなければなりません。
(出典:不動産登記規則第74条2項)

さらに、各階平面図及び建物図面の用紙は、
日本工業規格B列4番(B4サイズ)の丈夫な用紙を用いて、
作成しなければならないとされています。
(出典:不動産登記規則第74条3項)

また、不動産登記規則第81条では、各階平面図及び建物図面は、
一個の建物ごとに作成し、もし、附属建物がある時は、
主である建物と附属建物を合わせて、
一個の建物として作成しなければならないと定めています。
(出典:不動産登記規則第81条)

資格証明情報

資格証明情報というのは、下図8のような書面のことです。

資格証明情報の例
(図8:資格証明情報の例)

資格証明情報は、上図8のような代表者事項証明書か、
法人の代表者の資格を証明する登記事項証明書のことで、
建物表題登記の申請人が法人の場合にのみ必要になる書類のことです。

ただし、申請人となる法人の会社法人等番号を、
下図9のように、登記申請書に記載して提供した場合は、
法人の代表者の資格を証明する登記事項証明書、
又は代表者事項証明書の添付を省略することができます。

登記申請書の資格証明情報欄で会社法人等番号の提供例
(図9:登記申請書の資格証明情報欄で会社法人等番号の提供例)

相続証明情報

相続証明情報というのは、建物の所有者が亡くなっていて、
その相続人が建物表題登記の申請人となる場合にのみ必要になる書類です。

具体的には、下図10のような戸籍謄本類や、
下図11のような遺産分割協議書、
下図12のような遺言書などのことです。

(図10:相続証明情報の例1)
(図11:相続証明情報の例2)
相続証明情報の例3
(図12:相続証明情報の例3)

戸籍謄本類は、亡くなった建物所有者の出生から死亡までと、
通常、その法定相続人全員の分が必要となります。

なお、亡くなった建物所有者と相続人の戸籍謄本類の代わりに、
法務局で交付してもらう法定相続情報一覧図でもかまいません。

また、法定相続人が複数いる場合には、
法定相続人全員の印鑑証明書付きの遺産分割協議書、
又は、亡くなった建物所有者の遺言書も必要になります。

もし、法定相続人の中に、相続放棄をした者がいる場合は、
相続放棄申述受理証明書も必要になります。

逆に、亡くなった建物所有者の法定相続人が、
1名のみの場合は、戸籍謄本類は必要ですが、
遺産分割協議書や、亡くなった建物所有者の遺言書は、
通常、どちらも不要です。

代理権限証明情報

建物表題登記を代理人が申請する場合には、
代理権限証明情報として、下図13のような、
委任状が必要となります。

代理権限証明情報の例
(図13:代理権限証明情報の例)

代理権限証明情報は、建物表題登記の申請を、
土地家屋調査士などの代理人に依頼した場合に、
代理人の方で作成して、建物所有者に署名押印をいただき、
法務局に提出するのが一般的です。

法定添付書類以外の書類

ここまでの必要書類以外にも、地図上で現地を示した案内図と、
建物の外観や内観の写真も、建物表題登記の申請時に、
法務局に提出する場合があります。

地図上で現地を示した案内図
(地図上で現地を示した案内図)
建物の写真
(建物の写真)

特に、法務局への建物表題登記の申請を、
代理人の土地家屋調査士に依頼した場合は、
地図上で現地を示した案内図と、
建物の外観内観の写真も、法務局に提出するのが通例です。

なぜなら、建物の写真なども一緒に添付しておくことで、
法務局の担当者による現地調査を省略して、
建物表題登記手続きにかかる時間を、
短縮できる可能性があるからです。

ただ、建物の所有者本人が申請する場合は、
通常、法務局の担当者による現地調査が行われますが、
それでもやはり、現地案内図と建物の外観内観の写真は、
できれば添付しておいた方が良い書類と言えます。

以上、建物表題登記の必要書類について解説いたしました。

なお、建物表題登記の申請書の様式と書き方については、
建物表題登記の申請書の様式(書式)と書き方」で、
くわしく解説しています。