
土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:建物表題登記など表示に関する登記全般。
経歴:開業以来23年間、建物表題登記など登記に関する業務を行ってます。
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これからマイホームを購入される方、
あるいは中古物件のDIYやリノベーションを計画されている方、
ちょっと待ってください。
間取り図や販売図面だけで判断していませんか?
実は、不動産取引のプロや、私たち土地家屋調査士は、
必ず法務局にある「各階平面図」と「建物図面」を確認します。
なぜなら、「各階平面図」と「建物図面」を確認していないと、
次のような深刻なトラブルに巻き込まれるリスクがあるからです。
- 「庭だと思っていた場所が、実は隣の土地だった」
- 「離れやサンルームなどが、登記されていない違法状態だった」
- 「リフォームしようとしたら、図面と寸法が全然違った」
「図面の見方なんて難しそう…」と思われるかもしれませんが、
安心してください。
ここだけは絶対に見落としてはいけない「危険なサイン」について、
見るべきポイントはほんの数箇所です。
この記事では、各階平面図と建物図面の見方と注意点について、
建物表題登記の申請業務を行っている土地家屋調査士が、
実際の図面を見ながら、わかりやすく解説致します。
この記事を読むと、各階平面図と建物図面の見方が全て分かり、
あなたもプロと同じ視点で物件チェックができるようになります。
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記事を読みたい方は、このまま下に読み進めて下さい。
各階平面図と建物図面の見方と注意点
まず、各階平面図と建物図面というのは、
次のような図面のことです。

通常、B4サイズの用紙1枚に収まっており、
用紙の左半面が各階平面図で、
用紙の右半面が建物図面となります。
ただし、建物の大きさや、敷地の広さによっては、
各階平面図と建物図面が、
別々の用紙で作成されている場合もあります。
各階平面図と建物図面のそれぞれの役割としては、
各階平面図では、建物の各階の形状と寸法と大きさがわかり、
建物図面では、敷地のどこに建物が建っているかがわかり、
どちらも重要な図面です。
また、建物図面および各階平面図が重要であるかの理由は、
国の機関である法務局に公的な資料として備え付けられており、
建物の形状や正確な床面積を証明する客観的な根拠となるからです。
そのため、不動産の売買や融資の審査、
リフォームの設計といった重要な場面で、
現況との整合性を確認するために、
信頼性の高い資料として活用されます。
それでは、どこに何が記載されているのかを、
1つ1つ見ていきましょう。
① 住所と地番は別物!建物の所在地番と家屋番号の見方
まず、下図1のように、図面の右上には、
建物の所在地番が記載されており、
どこの建物の各階平面図と建物図面なのかがわかります。

上図1の各階平面図 及び 建物図面で言えば、
〇市〇町三丁目10番地1と10番地2に建っている建物、
ということです。
なお、普段使っている住所が何番何号といった住居表示の場合、
建物図面に記載されている地番は、
別物という事を理解しておく必要があります。
ただ、地番をそのまま住所として使用している地域もあり、
そのような地域では、住所と地番は一致しています。
また、下図2のように、建物図面を見ると、
主である建物が、10番地1と10番地2にまたがって建っており、
附属建物が10番地2に建っていることが、視覚的にもわかります。

建物図面に記載されている主という文字は、
主である建物という意味で、
附1という文字は、附属建物という意味です。
なお、建物の所在地番は、建物の床面積が多い土地の地番、
または、主である建物が建っている土地の地番が先に記載され、
他の土地の地番は後に記載されるというルールがあります。
上図2の建物で言えば、主である建物が10番地1に建っており、
建物の床面積も、10番地1の方が多いので、
建物の所在として、10番地1を先に記載して、
10番地2を後に記載しているのです。
次に、下図3のように、図面の右上の家屋番号欄には、
建物の家屋番号が記載されています。

家屋番号は、建物を特定するために、
法務局(登記所)が建物1個ごとに付けた番号のことです。
建物の家屋番号は、市区町村役所の固定資産税の係りから、
毎年5月頃に送られてくる固定資産課税明細書にも記載があり、
どの建物の各階平面図と建物図面なのかを、
家屋番号で特定できるようになっています。
そのため、家屋番号を見る際の注意点としては、
建物の家屋番号で、今見ている図面が、
「本当に自分の物件のものか」を確実に確認しておくことです。
なぜなら、ここを間違えてしまうと、
全く違う物件の図面を見てしまうリスクがあるからです。
ちなみに、家屋番号は、不動産登記規則第112条1項で、
建物の敷地の地番と同じ番号で定めるとされています。
もし、二筆以上の土地にまたがって1個の建物がある場合には、
床面積の多い部分のある敷地の地番と同じ番号で、
家屋番号を定めるというルールが、
不動産登記準則第79条3号で定められています。
② 北は上とは限らない!方位の確認
下図4のように、建物図面には、図面の上が北なのか、
図面の下が北なのかを示すため、必ず方位の記載があります。
方位の見方としては、一般的に、
数字の4の形をした先端が、北の方角を意味します。
また、下図5のように、数字の4の形をした先端には、
北の方角を意味するNという文字が記載されていることもあります。
基本的には、建物図面の上が北方向になるように作成しますが、
建物図面の上が北方向でない場合もあるため、
図上の方位記号を見て、北方向を確かめる必要があるのです。
なお、方位のデザインについては、
建物図面の作成者が任意で作っているため、
簡単なデザインから、下図6のような凝ったデザインまで、
作成者によって様々です。
もし、図面を見る際に、方位を誤解してしまうと、
日当たり計算やリフォームプランで、
致命的なミスになりかねないので、方位の確認は必須と言えます。
③ 各図面の縮尺の見方と、縮尺の落とし穴
下図7のように、図面の右下には、
建物図面の縮尺が記載されており、
図面の中央下には、各階平面図の縮尺が記載されています。
まず、建物図面は、原則、500分の1の縮尺で作成されますが、
敷地の大きさや建物の大きさ、その他の事情によっては、
1000分のなどの縮尺によって作成されることもあります。
次に、各階平面図は、原則、250分の1の縮尺で作成されますが、
建物の大きさや、その他の事情によっては、
500分の1などの縮尺によって作成されることもあります。
つまり、図面の左右で縮尺が違うことが多いため、
建物購入後の計画や、リフォームプランなど、
定規で測って計算する際には、最初に縮尺の確認が必要です。
④ 境界線の鵜呑みは危険!建物配置と境界トラブルの見抜き方
下図9のように、図面の右半面には、通常、建物図面が記載され、
敷地の形状と、敷地に対して各建物がどこにあるのか、
敷地の地番、隣接地の地番などがわかるようになっています。
そして、上図9の例のように、附属建物がある場合は、
主である建物は「主」と記載されていて、
附属建物は、その符号と一緒に、「附1」と記載され、
各建物の位置関係がわかるようになっているのです。
また、下図10のように、各建物の配置を特定するために、
敷地の境界線から建物の外壁までの距離が、
最低3ヶ所以上、記載されているのが一般的です。
これによって、敷地に対する各建物の正確な位置と、
向きがわかるからです。
ただここで、不動産購入を考えている方や、
DIYなどを考えている方にとって、重要なことがあります。
それは、図面には、境界線から建物までの距離が書かれてますが、
この数値を鵜呑みにしてはいけないことです。
なぜなら、敷地境界線から各建物までの距離は、
隣地所有者に確認をしていないケースや、
現地のブロック塀などをもとにおおよそで測ったケースや、
敷地所有者のみに確認したラインで測っているケースも多々あるからです。
たとえば、「図面では、50cm空いているから、室外機が置ける」
と思っても、実際はぎりぎりや、置けないという場合もあり、
境界線からの距離は、現地でメジャーを当てての確認が必要です。
また、境界トラブルを防ぐには、正確な境界線自体の確認も必要になります。
なぜなら、建物図面に記載されている敷地境界線は、
もちろん正確な場合もありますが、
確定している境界線ではない場合もあるため、
参考程度というのが、一般的な見方だからです。
つまり、建物図面は、敷地に対して、
各建物がどの辺りにあるのかが、
大体わかる図面ということです。
⑤ 違法増築・未登記を見抜く!各階の形状と床面積の見方
下図11のように、図面の左半分には、通常、
各階平面図が記載されています。
ただし、数十年前などかなり古い各階平面図の場合や、
建物の大きさによっては、1枚の用紙全体に、
各階平面図を作成する場合もあることに注意が必要です。
各階平面図には、下図12のように、建物の各階の形状と辺長、
1階、2階・・といった階数、各階の床面積、
各階の床面積の求積方法が記載されています。
ここで必ず最初に確認していただきたいのが、
「主である建物」や「附属建物」の記載です。
もし、附属建物がある場合には、下図13のように、
主である建物と附属建物の符号が記載されて、
どの建物の各階平面図なのかがわかるようになっています。
主である建物というのは、敷地内の建物の中で、
主な用途を持つ主要な建物のことで、
具体的には、一般的な家屋(母屋)などが該当します。
附属建物というのは、「主である建物」に附属して、
主である建物と一体として利用されている建物のことで、
具体的には、母屋の隣にある物置、納屋、ガレージなどが該当します。
なぜ、「主である建物」や「附属建物」の確認が必要なのかは、
現地に離れやサンルームなどの建物が母屋以外にあるのに、
図面に附属建物の記載が無い場合は、未登記建物で、
登記がされていない違法状態の可能性があるからです。
未登記建物のままだと、住宅ローンが通らなかったり、
不動産購入後に、自分で登記する費用が発生したり、
将来、売却する際にトラブルになることもあります。
そのため、必ず図面の建物の数と、現地の建物の数を、
数え合わせることが重要です。
ただし、附属建物が無い場合もあり、その場合は、
下図14の例のように、各階平面図には、「主である建物」の記載や、
「附属建物」の記載は、一切無いことに注意が必要です。
また、附属建物が無い場合には、建物図面にも、
主や、附1、附2・・・などの記載はありません。
つまり、各階平面図と建物図面の両方を見て、
「主である建物」又は「主」といった記載や、
「附属建物」又は「附1」といった記載がなければ、
附属建物は無いということがわかるのです。
次に、各階平面図に記載されている各建物の形状と、
現地の各建物の形状が一致しているかどうかの確認が必要です。
なぜなら、建物表題登記が行われた当時は、
各階平面図および建物図面の内容と、
実際の建物の形状は、通常、一致しています。
しかし、建物表題登記を行った後で、増築又は減築を行い、
その登記を行っていない場合、つまり、未登記の場合、
図面の内容と、実際の建物の現状が、異なっている可能性があるからです。
未登記部分があると、住宅ローンの審査に影響が出たり、
売却時に価格を下げられたり、最悪の場合、
登記費用の負担や、取り壊しの指導を受けるリスクがあります。
そのため、法務局の各階平面図や建物図面を見る際には、
図面の内容をそのまま鵜呑みにせず、建物の現状と見比べて、
増築または減築の有り無しについても、確認が必要なのです。
⑥ 隠れた情報源!作成者と作成年月日で図面の「信頼度」を測る
下図15のように、図面の左下には、
各階平面図と建物図面の作成者の住所と氏名が記載されています。
図面の作成者としては、一般的に、
土地家屋調査士の住所と氏名が記載されていることが多いです。
ただし、建物表題登記の申請を、
建物の所有者本人が行っている場合には、
建物の所有者が図面の作成者になっていることもあります。
また、作成者の欄には、下図16のように、
図面を作成した年月日も記載されています。
もし、図面の作成年月日が、昭和など古い日付の場合、
増築・減築の未登記など、現況と異なる可能性や、
測量精度の問題があるため、信頼度は参考程度と考えます。
逆に、最近の日付であればあるほど、
現況を正確に反映している可能性が高いと考えられます。
また、作成者が「建物の所有者本人」の場合、
土地家屋調査士といった専門家による測量ではないため、
図面の情報の精度には、注意が必要です。
まとめ
今回の解説で、法務局の「各階平面図」と「建物図面」が、
あなたの未来の不動産トラブルや、損失を防ぐための
最強のチェックツールである事がお分かりいただけたでしょうか。
重要なのは、「図面と現地の違いを見抜く目」を持つことです。
特に、以下の3つのポイントは必ず確認してください。
- 地番と住所のズレ、家屋番号の一致
- 境界線から建物までの距離の現況との比較
- 未登記の建物や増築がないか
各階平面図及び建物図面は、法務局で誰でも数百円で取得できます。
ぜひご自身の物件や、購入を検討している物件の図面を取得して、
この記事(又は動画)を見ながら、「間違い探し」をしてみてください。
もし、図面と現況に不安な点があれば、
すぐに専門家である土地家屋調査士に相談しましょう。
それが、将来の大きな損失を防ぐ確実な一歩です。
以上、各階平面図と建物図面の見方と注意点について解説致しました。












